日頃食に関するテレビ番組は欠かさず予約録画しており(関心あるジャンルや報道形態だけですが)、それがたまりたまっていつもハードディスクの容量を圧迫しています。暖かい時期は晩酌がテラスでの炭火焼きなのでそれらを見る前にすっかり出来上がってしまうのですが、ようやくこの時期になって毎晩のように見ることができるようになりました。
また、経営学の講義で毎週東京に行っている際は、勉強のために見るべきテレビ番組として「カンブリア宮殿」「ガイアの夜明け」「がっちりマンデー」の3つを挙げています。そのカンブリア宮殿の以前の番組をこの日の夜に見ました。取り上げたのはベーカリーチェーンのアンデルセンです。
その中で、またまた突っ込むべき内容がありました。何でも、それまで業界で問題になっていたパン職人の長時間労働を改善するために、パン生地を冷凍する技術で取った特許を他社に公開したということです。村上龍さんも「えっ、何でそんなことしたんですか?」と驚いていましたが、もともと特許というものはその取得以前にすべて公開されるものです。
詳しく記すと、特許を出願してから1年半経つと出願先である特許庁により「こういう発明が出願されました」という内容が公開されます。つまり発明の秘密が当局により公にされてしまうわけです。この出願公開制度というものがなぜあるのかというと、同じような発明をしている人たちに早く知らしめることにより、その後の無駄な研究開発のエネルギーを他に向けてもらうためです。日本の特許制度は先に出願した人に権利があるという先願主義ですので。
そうするとその発明の内容を真似する人が当然出てくる可能性があります。しかも出願段階で公開されるので、その後の審査を経て正式に特許権が得られる前に真似されてしまうわけです。それを防ぐため、そうした真似をした人に対して後に補償金請求権というものが特許権者に認められています。そしてもちろんこれは特許権者ということなので、その特許が成立した後でのことです。審査の過程で認められないという可能性もありますからね。
したがって今回の番組では公開自体はされるのが当たり前のことなので、誤解を与えかねません。おそらく正確には公開された特許の使用を無償で認めたという意味であろうと思われます。通常は特許の使用(発明の実施といいます)についてはライセンス契約により有償とするのに対して、わかりやすい「公開」という表現にしたのではないでしょうかね。
実はこうした法律講義を東京の学校で長年しているので、これは黙ってはいられなかった一件です。特許は発明を保護するものですが、その発明の内容は今はネットで簡単に見ることができます。ただしそれを真似すると直ちに特許権の侵害となり、損害賠償等を請求されますのでお気をつけ下さい。もっとも、特許には期限があるのでその後は自由に使ってもいいのですけれどね。
2014年12月10日
特許は公開するものです
posted by bourbon_ueda at 00:00
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| 食をめぐる報道
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