いつも新聞の書評に載っている本を主に図書館で借りて読んでいるのですが、この度「小林カツ代と栗原はるみ」という料理研究家の変遷を綴った本を読みました。その他にも私が知る限りでは(以下敬称略)飯田深雪、城戸崎愛、辰巳芳子、有元葉子、山本麗子、藤野真紀子、平野レミ、枝元なほみ、土井勝、土井善晴、ケンタロウ、栗原心平、コウケンテツ、などなど。
このように料理研究家と言えばほとんどが女性ですが、この本もその背景としての女性史という側面が強く、また面白いです。そしてこうした料理研究家が紹介する料理は特に最近までは洋食が中心、ということで、各料理研究家のビーフシチューのレシピを比較して記述してありました。これがまた面白い。
特にその黎明期とも言える時代は基本に忠実でクラシックな作り方で、時間も手間もかかります。そこへ革命的な手順を採り入れたのが小林カツ代さん、迷いもなく市販のデミグラスソースの缶詰を使うところがこの人らしいということです。最近は当たり前の時短料理の先駆けという存在だそうです。
そしてもっと驚きは栗原はるみさん、これにトンカツソースやケチャップといった思い切り出来合いの調味料を加えるところです。トマトピューレも煩わしい、ほかの野菜もすでに煮込んであるものを使ってしまえというところでしょうか。
しかしこれらが単に手抜き料理の発想から来ているわけではないということが、この本を読むとよくわかります。一言でいうとこれらのレシピには彼女らの哲学がその背景にあります。それは、彼女らのレシピ本の前書きや後書きを読むと多分わかるようです。何で私はこういう作り方をするのかという思想が、今回読んだ本には紹介されています。
ほかにも、もともとほかの取材で訪れた家の撮影で食器が足りなくなってしまい、たまたま向かいの家に食器を借りに行ったところそれが有元葉子さんの家で、そのクオリティーの高さに驚いたことがきっかけとなったなど、いろいろなエピソードがふんだんに盛り込まれています。この分野に興味のある方には一読をお勧めします。
2015年11月11日
料理研究家の本を読んだ
posted by bourbon_ueda at 00:00
| Comment(0)
| 食をめぐる報道
この記事へのコメント
コメントを書く