テレビ番組だから編集の都合で真意が伝わらなかったかもしれませんよ。だとしたらその後のナレーションには著しく配慮を欠いたのではないでしょうか。
食べもの関係の番組で毎週見ているものに「食彩の王国」があります。実際にはパソコンで予約録画して後日見ているので、先々週の放送になるでしょうか、三國清三シェフが出ていた毛ガニの回です。
シェフが熱っぽく語るその言葉に、「火を通して新鮮、形を変えて自然」が出てきて、おやっと思いました。番組側も、それは意外、でも聞けばなるほどと賞賛していました。でもこの言葉はもともと三國さんのオリジナルではありません。
現職は存じ上げませんが、当時志摩観光ホテルの総料理長だった高橋忠之さんの有名な言葉です。世代としては三國さんの方がもちろん下ですから、おそらくどこかで聞いていたのでしょう。もしオリジナルだとしても、ここまで一字一句同じであることは考えられません。
番組収録時には、「〜という某シェフの言葉があります」という風に三國さんは話していたのかもしれません。だとすればその後のナレーションでことさら取り上げるべきではないでしょう。何しろ三國シェフが主役の回ですから。
この真実を知らないで初めて聞いた若い料理人などは、「〜という三國シェフの言葉があるんだよ」などと言って伝播していくのでしょうね。このことはまるでフィリップ・マーロウの「ギムレットにはまだ早すぎるね。」と同じです。
高橋シェフにはもう一つ、「かまどの詩人になってはいけない」という言葉があります。これは料理人はただ料理のことを考えているだけではいけない、経営全般のことを考えなければいけないという意味で、ご自身がそれを実践されていました(その後ホテルの総支配人になられたようです)。
それにしても昨今の食べもの番組、ひとこと言いたくなることがずいぶんと増えたような気がします。
2010年07月30日
先人の言葉を盗用するな
posted by bourbon_ueda at 00:00
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| 食をめぐる報道
大正生まれの村上料理長のほうが、高橋さんより先におっしゃってたように思えますが。