食に関するテレビ番組を見ていて、いつも気になる表現がいくつかあります。その一つが「余分な脂を落とす」です。鶏肉の皮目を焼いている時などに多いですが、それ以外にも肉や魚に最初に火を通す際によく使われます。本当に余分な脂なのか?と思い、であればもっと脂の少ない食材にすればいいのに、などとつぶやいています。
しかしこの日見た番組では驚きました。静岡県三島市にある私たちも行ったことのある鰻屋さんの話です。全国から厳選された鰻を仕入れ(これもステレオタイプの表現ですが養鰻しているところは全国にそうないはずです)、3日間富士山の伏流水で泳がせ、“余分な脂を落とす”のだそうです。泥を吐かせるためなどならわかりますが、それって単に痩せさせているだけではないのでしょうか。
そして鰻屋さんなので嫌な予感がするなと思っていたら、やはり出ました秘伝のタレ。もううんざりです。テレビにしても雑誌にしても、言葉一つ一つの意味を考えながら使ってほしいものです。どこかで聞いたようなフレーズをつなぎ合わせるという作業の安直さが感じられて辟易とします。
食材の表面を焼いたり炙ったりするのは、例えばフランス料理のリソレという技法のように調理上の合理性があるはずです。それを一律に「余分な脂を落とす」といった表現で片付けてしまうのはやはり安直です。料理を知らない人が文章を書いているなと思うことしばしばです。
リソレといえば、同じようにステレオタイプで出てくる「うま味を閉じこめる」とか「おいしさが凝縮する」といった表現がありますが、これも見る度にもっと正確な解説をすればいいのにと思うことがあります。これらについては機会があればまた。
2012年06月09日
余分な脂を落とす?
posted by bourbon_ueda at 00:00
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| 食をめぐる報道
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