2012年12月30日

その日揚がった本マグロ?

好きなので食に関するテレビ番組は欠かさず見るようにしています。以前何かで読んだ話ですが、フランス人の友人が日本に遊びに来て、一日中どこかの番組で食に関することを放映しているのにびっくりしたということです。“食べることには絶対に手を抜かない”という枕詞がよく付くフランス人にとっても、日本における食情報の氾濫は驚きだったようです。

食は奥が深く、これだけ積み重ねてもまだ知らないことも多い中、逆にいい加減もうやめてくれといった表現がいくつかあります。このブログでも何回か書いていますが、共通するのはあまりその意味を考えずに使うステレオタイプの表現です。これまでには「秘伝のタレ」や「余分な脂を落とす」について記してきました。

今回は新鮮な魚介類を表す「その日揚がった魚」です。確かに海辺の料理屋や旅館などではそれもよくありますが、問題はその魚の種類です。そのお造りの中に本マグロが誇らしげに紹介されていました。日本でその日揚がった本マグロが食べられるのは大間とか沖縄くらいしか思い当たりません。しかも紹介されていた宿はそうしたマグロ水揚げで聞いたことがある土地ではありません。

マグロは遠洋漁業が主流で、船内でマイナス60度に急速冷凍されて日本に水揚げされるのが通常だと思います。その入港地として三崎とか焼津が有名になっているのでしょう。鮨屋さんによっては2週間も熟成させるところもあったりして、特にマグロは新鮮さが売りものにはならない魚だと思っています。

一般に、多くの魚の活き作りがあまりおいしくないのは、うま味のアミノ酸が増えるまで締めてから24〜48時間と言われるところによります。活き作りは味より歯ごたえを楽しむ料理のようです(白身魚はそうでもないらしいですが)。ですから何でも獲れたてが良いといった画一的な表現に失笑してしまうわけです。いつも書いていますが、あまりよく考えずに台本を書いているとしか思えません。

マグロといえば、今年の正月には初物をたいそうな高値で競り落とした鮨チェーン店が話題になりました(あのレディーガガさんが行ったお店です)。テレビ番組で軒並み紹介されたことから、広告宣伝効果としては十分であったという見方が一般的です。さて来年はどうなるやら。
posted by bourbon_ueda at 00:00 | Comment(0) | 食をめぐる報道
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