2013年04月04日

真空調理で余分な脂?

以前「余分な脂を落とす」という表現については書きましたが、「秘伝のタレ」とともにあまりにも安易に使いすぎではないでしょうか。これまでも何回か書いている「食彩の王国」、もういい加減にして下さいという感じです。

今回のテーマは江戸甘味噌ということでしたが、フランス料理のシェフがフォアグラにその味噌を付けて真空調理していました。そこで出てきた表現が「こうして余分な脂を落とす」です。真空調理で脂が落ちるのでしょうか。うま味を閉じ込める技法なので、脂だけが外に出て来るとは思えないし、フォアグラはもともと脂の塊なのでその“余分な脂”とは一体何なのでしょうか。

思うに、食材に火を通すこと自体(特に肉や魚)、その効用が脂を落とすことであると勘違いされていないでしょうか。だったら霜降りの牛肉のステーキも、脂を落とすことが目的で焼いているのでしょうかね。あまりにもステレオタイプ、食に関するボキャブラリーの貧弱さを感じます。もとより、本質的な意味をよく考えずにどこかで聞いたようなフレーズを多用することの意識の浅さが問題です。

もともと真空調理(スービット)は、フランスの長距離列車において限られた厨房施設で質の高い料理を提供するために考案された技法とされています。最近は街場のレストランでも肉を焼く際には高温にせず、じっくりと優しく火を入れる調理法が実践されているようです。なので、本来は奥深い技法をこう安易な言葉で片付けられてはかないません。頼みますよ、番組製作会社さん。
posted by bourbon_ueda at 00:00 | Comment(0) | 食をめぐる報道
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